2010年9月6日月曜日

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

・心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後になって様々なストレス障害を引き起こす疾患のことですが、PTSDと診断するための基本的症状が1ヶ月以上持続している場合はPTSD、基本的症状の持続が1ヶ月未満の場合にはASD(急性ストレス障害)と診断されます。

[基本的症状]
(1)回避:トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
原因となった外傷的な体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状と感情や感覚などの反応性の麻痺という症状を指します。
(2)過覚醒:精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
交感神経系の亢進状態が続いていることで、不眠やイライラなどが症状として見られます。
(3)再体験:事故や事件、犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる再体験(フラッシュバック)。

原因となった外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い出されたり、夢に登場したりします。
・強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとするが、そのため、事件前後の記憶の想起の回避や忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味や関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害、身体運動性障害などが見られ、特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られます。

・PTSDを治療するには、時間の経過を待つのではなく、トラウマ体験を過去の事として終わらせる必要があり、受けた傷の圧力を軽減させるためには、心の中に秘めるのではなく、その体験に向き合い、その事について話す事が、体験を過去の事として終わらせる為の重要なことなのですね。

・トラウマの治療と同様に、後遺症を深刻化させないための重要な対策にもなるので、専門的な知識を持った専門職や医師の心理療法を受けることが有効ですが、気分の深刻な落ち込み、入眠困難、中途覚醒などの症状によっては薬物療法も必要になります。

・PTSDの回復とは、事件を繰り返し整理し、異常な状況や事件を思い出すことによる無力感や生々しい苦痛に襲われなくなる状況や、それに強く影響されず、最低限の生活ができるようになった状況を指し、治療としては、PTSD発症のきっかけとなった事件後の心と身体、生活の変化を自覚し、元に戻す作業が行われます。

・PTSDを治療するには、通常、薬物療法と心理療法の双方が用いられます。
心理的外傷となる出来事への情緒的な反応を解決するには、薬物療法など併用しながらの、ナラティブセラピー*が最も有効だと考えられていますが、近年ではEMDR*も効果的な治療方法として注目を集めています。


*ナラティブセラピー (Narrative therapy) とは、
クライエントの自主性に任せて自由に記憶を語らせることによって、単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで、幅広い改善を起こさせることを目的とする心理療法のこと。

*EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、左右に振られるセラピストの指を目で追いながら、過去の外傷体験を想起するという心理療法(眼球運動による脱感作および再処理法)で、PTSDを始めとして、パニック障害、恐怖症、解離性障害などへの有効性が知られています。

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