端的に言えば、
・死にたいという思いが「自殺願望」で
(生きているのが嫌だから死にたいと思ったり、死ねるものなら死にたいと抱く思い。)
・死ななければならないという思いが「希死念慮」なのですね。
(死ななくてはいけないと思い込んでしまったり、死にたいという言葉が頭に浮かんで離れないなど自殺することを義務的に思っている。)
死にたいと考える「自殺願望」や、自殺をしたいと願う「自殺志願」、実際に自殺しようと行動に移す「自殺企図」、客観的に理解しがたい理由で死にたいと願う「希死念慮」などの欲求は、生きているからこそ現れる現象なのですね。
何故なら、生きているという実感がなければ、死にたいと思うことはないはずですからね。
死ぬことは、決断さえすれば計画的であろうが衝動的であろうが、いつでも出来ます。
今、本当に死にたいと思うのなら、やりたかった事をしてから、行きたかった所に行ってから、見たかったモノを見てから、それからもう一度考えてみては如何でしょうか。
私がこの職業に、真剣に取り組むキッカケになった友人がいます。
彼は、「自殺願望」から解放されて約10年になる、現在は50歳代の家族のいる既婚者ですが、20代になって発症した“うつ”と20年近く付合ってきました。
当時、何か少しでも嫌なことや辛いことがあると、「死にたい!」と口癖のようにいっていましたので、とにかく理由も時間も関係ないので、死にたくなったらリストカットをする前に連絡をしてくるという約束をしていました。
彼には、ペット(犬)を飼うことを勧めて、生き物と触れることでの喜びや嬉しさを経験してもらいました。
ペット(犬や猫)は、飼い主が悩んでいたり苦しんでいることを、誰よりも敏感に察してくれますのでね。
それと、ペット(犬)を飼えば食事や排泄物の世話、運動のための散歩など、飼い主なしではペット自身が生きて行くことができない現実に直面しますので、自分自身も生きているという実感を忘れることができないのですね。
また、日々、思った事や感じた事、しようと思った事や実際にした事を時系列順にノートに書いてもらい、その時その時の満足度を客観的に自己採点してもらい、思考・認知のパターンを変えることで、彼の中で問題となっている感情や行動を変えていきました(認知行動療法)。
そこで彼の意識は、自殺願望など全くない人より、多少死にたいと思う事がある人の方が現実はマトモなのではないかと、考えるようになったのです。
彼は、自分の病気の“原因探し”や“原因退治”は止めて、今の現実だけを受け止めようと決めて、かねてからやりたいと思っていた山登りを始めたのです。
しかも、自分のレベルよりも、少し難しい山にチャレンジを始めたのです。
その理由を聞くと、頂上を目指して登っている時の「家でペットが待っている」から「生きて帰らなければ…」という思いと、頂上に達した時の達成感は「生きる喜び」そのものだと言っていました。
死にたくなるのは、脳の神経回路の誤作動ですから、服用する薬にも注意が必要です。
特定の抗うつ剤の中には、“自殺促進剤”と揶揄されるほど自殺願望を強める作用も持っているものもありますし、希死念慮が強く現れるという副作用を持っている薬もあります。
薬には、効果(ベネフィット)だけでなく、副作用(リスク)が必ずあります。
副作用をなるべく抑え、効果を最大限に引き出すためには、症状と体質に合った薬を服用することが、何よりも大切なことなのですね。
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